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「カウンセラー」と「アドバイザー」の違いは?~しっかり確認してからカウンセリングを受けよう~
カウンセリングを受けに来られる人の中には、悩みや困りごとの具体的な解決策や明確な答えを求めている人がいます。
これはつまり、アドバイスを求めて来られるというわけです。
しかし、この「アドバイスを求めて」カウンセリングを受けに来られるという考え方は、必ずしも正しいものとは言えません。
この後、詳述しますが、「カウンセラー」と「アドバイザー」は、混同されることがよくありますが、実際はまったく別物と考えておいてください。
「カウンセラー」と「アドバイザー」の違いについて説明する前に、一般的な辞書などによる説明を見ておきましょう。
ネット上でも閲覧できる主な辞書で調べると、多くの場合、アドバイザーとは「忠告者」「助言者」「顧問」のことであると記載されています。ここに「カウンセラー」も併記されている辞書もありますが、極めて例外的と言えるでしょう。
一方のカウンセラーについては、「助言者」「相談員」のことであると説明されています。
アドバイザーとカウンセラーの両方の説明に「助言者」という言葉が用いられていることもあり、両者はほぼ同義であるかのように誤解している人もいるようです。
以上が、一般的な辞書による説明をまとめたものです。これらを念頭に置いて、さらに読み進めていただければ、より理解が深まると思います。
冒頭で、「カウンセラー」と「アドバイザー」はまったくの別物であると述べました。
しかし、別物とはいえ、非常に大きな共通点があるのも事実です。これが、誤解を生む原因となっているので、よく頭に入れておいてほしいところです。
カウンセラーとアドバイザーの共通点。それは、一言で言うと、「相談者をサポートする」という点です。
もう少し説明すると、悩みや困りごとなどを抱えて相談に来られた人に対して、各分野の専門家としての立場から支援(サポート)を行なうということです。
では、逆に、カウンセラーとアドバイザーの違いは何かというと、ひとつには「アドバイスをするか、しないか」ということが挙げられるでしょう。
後述しますが、アドバイザーは積極的にアドバイスをしていきますが、カウンセラーは基本的にはアドバイスをしません。極端な話、ただひたすら聞いているだけということもあります。
しかし、悩みや問題を解決するために必要なアドバイスや、日常生活の中で実践したほうがよいことを「提案」という形でお伝えすることはあります。
以上のように、カウンセラーとアドバイザーには大きな「共通点」と「違い」があります。
しかも、両者の違いはこれだけではありません。さらに詳しく説明していきましょう。
カウンセラーとアドバイザーの違いを説明する前に、カウンセラーの最大の特徴について説明しておきましょう。
これは、アドバイザーとの決定的な違いにも通じることであり、非常に重要なポイントと言えるので、最初に説明しておく必要があるのです。
カウンセラーの最大の特徴は、次のように説明することができます。
カウンセラーは、心の問題の根本解決を目的としており、そのために相談者の状況やつらいことをしっかりと聞く点です。
ここで特に重要なポイントとなるのは、「しっかりと聞く」というところです。
カウンセラーが相談者の話を「しっかりと聞く」理由は、表面にあらわれている心の問題の根(原因)は、本人が気づいていない(意識していない・できていない)ことであることも少なくないためです。
そのような場合、相談者が「気になっていること」に対してアドバイスをしたとしても、違和感を抱いてしまったり、「何か違う」「そういうことじゃない」という感覚になってしまい、アドバイスされたことを実践することにつながらないのです。
もう少し噛み砕いて言うと、人は、他の人からいくら有益なアドバイスをされたとしても、「なるほど」と納得できなければ、自発的に「やってみよう」という気持ちにならず、行動しないということです。
カウンセラーとアドバイザーの違いについて、ここでポイントだけを挙げると、次のように表現することができるでしょう。
(1) 相談者が抱えている「つらいこと」や「引っかかっていること(気になっていること)」に焦点を当てるか、そうでないか
(2) 癒やしが必要な場合(相談者が求めているかどうかに関わらず)は、その提供を目的としているか、していないか
(3) 「心の問題」を専門的に扱っているか、そうでないか
以上を踏まえて、さらに詳しくカウンセラーとアドバイザーの違いについて説明していきましょう。
カウンセラーとアドバイザーは、それぞれ目的(目指しているもの)が異なるため、相談者との「関わり方」に大きな違いがあります。
そこで、カウンセラーとアドバイザー、それぞれの「関わり方」を分けて説明していきましょう。
≪カウンセラーの関わり方とは?≫
カウンセラーは、心の問題を解決するために相談者の話をしっかりと傾聴するのが大きな特徴です。
相談者の心に不安感や緊張感があると、悩んでいることを本音で話すことができないので、安心してリラックスして話してもらう必要があります。
そのためにカウンセラーは、相談者が「受け入れられている」と感じられるように、にこやかな表情や穏やかな態度などで関わっていきます。
また、相談者が話す内容を受け止め、共感し、つらい気持ちなどを汲み取った言葉を伝えたり、状況を客観的に把握し、確認するための質問をしたりします。
カウンセラーがしっかりと傾聴することによって、相談者は自分の状況や気持ちを「わかってもらえた」と感じられることで気持ちが楽になったり、孤独感から解放されて安心感を得ることができます。
つまり、相談者が抱えている「つらいこと」や「気になっていること」を受け止め、それらを解消することで「癒し」を提供するという目的を担っているのです。
また、一人で悩んでいる時というのは、自分自身を客観的に見つめることが難しいですが、カウンセラーに話すことで、自分自身を客観的に見つめ、しっかりと向き合うことができるようになります。
その結果として、自然に考えや気持ちが整理されていき、自分の方向性を明確化できたり、本当に求めていたことを見い出すことができるようになります。
たとえば、「やりたいことが見つからない」とか「自分は何をやりたいのかわからない」と悩んでいたいた人が、「やりたいこと」を見つけ、それに向かって進んで行けるようになったりするのです。
あるいは、今、抱えている「生きづらさ」や、ストレスの強さを生み出している原因が生育歴(家庭環境や親子関係など)にあると考えられる場合には、過去の記憶・思い出、その時の気持ちなどを話してもらうこともよくあります。
こうすることで、引きずってきた過去を清算することができ、気持ちが楽になり、前向きな意識が湧き出すものです。
結果、今後の人生を楽に生きる力を身につけられるようになるケースもあり、カウンセラーはそのサポートを行うこともあります。
必要な助言(アドバイス)を行なうことはありますが、決して積極的ではなく、むしろ必要最小限にとどめるのが特徴と言えるでしょう。
なぜなら、相談者が抱える悩みについて、カウンセラーが積極的にアドバイスをしてしまうと、相談者は自分で問題を解決することをしなくなり、カウンセラーに依存するようになってしまう恐れがあるからです。
以上が、悩みを抱えている相談者に対するカウンセラーの関わり方です。
続いては、アドバイザーの関わり方について説明していきましょう。
≪アドバイザーの関わり方とは?≫
カウンセラーは基本的にアドバイスをしないのに対し、アドバイザーは、「安心感」や「癒し」などではなく、ズバリ「アドバイス」が求められます。
カウンセラーが提供する「安心感」や「癒し」といったものは、アドバイザーにはあまり重要とはされません。
そもそもアドバイザーは、そのようなものを提供するという目的や役割を担っているわけではありません。
ですから、カウンセラーのように「しっかり傾聴する」ということはありませんし、「生育歴を聞く」ということもありません。むしろこのようなことは不要と言ってもいいでしょう。
相談者がアドバイザーに求めているのはアドバイスであり、これがすべてと言ってもいいかもしれません。それほど、アドバイスが重要なのです。
だからこそ、アドバイザーは相談者が求める具体的なアドバイスを提供することに重点を置いた関わり方をするのです。
≪カウンセラーとアドバイザーの関わり方の違いの例≫
以上の説明で、カウンセラーとアドバイザーの関わり方の違いがおわかりいただけたと思いますが、より理解を深めてもらうために、ひとつの具体例を挙げて説明してみましょう。
次のような相談者がいたとします。
「将来に対する不安を解消したい。そのために脱サラして妻とカフェを開きたいと思っている」(会社員/30代)
この相談者に対して、カウンセラー、アドバイザーのそれぞれの対応を見てみましょう。
≪カウンセラーの対応≫
まずは相談者の話をじっくり時間をかけて丁寧に聞いていき、現在の状況をしっかりと把握します。
そうするなかで、相談者がもっとも引っかかっている(気になっている)ことやつらいと感じていることに焦点を当てる形でさまざまな質問をしながら話を進めていきます。
私たち人間の心というのは非常に奥が深いものなので、相談者が今気になっている問題の取っかかりの部分だけ話したとしても、気持ちが十分にスッキリしなかったり、根本的な解決につながらないことがあります。
そのため、カウンセラーの対応としては、とにかく「じっくりと聞く」ということや、「質問をして掘り下げる」という作業が必要になるのです。
こうすることで相談者の話の内容が「取っかかり」の部分からさらに具体的な部分へと深まっていきます。
すると、当初、相談者が話していた内容は、あくまでも「取っかかり」として存在していただけであって、本当に求めていたものや悩みの本質とは異なるということも少なくありません。
しかし、それは本人も気づいていないことである場合が多いので、カウンセラーの対応によって「自分を知る」ということにつながり、そこから悩みや問題を自ら解決する力を身につけていくことができるようになります。
そのサポートをするのがカウンセラーの役割なので、そのための対応をすることになります。
≪アドバイザーの対応≫
まず、カフェを開きたいと思った理由や、どんな雰囲気のカフェにしたいか(できるだけ具体的なイメージ)、どんな人たちに来てほしいか(若い女性、学生、主婦、OLなど、想定する客層)などを聞き取り、明確化し、確認します。
そのうえで、カフェを開くために必要な情報・知識、有益な助言(アドバイス)を提供していきます。
こうしたプロセスの中で、相談者が抱えている「つらいこと」や「引っかかっていること(気になっていること)」に焦点を当てることはしません。
もちろん、相談者から、不安に感じていることや疑問に思っていることが提示された場合には、それらを解消する方法などを提案することはあるかもしれませんが、積極的に相談者の「感情」や「気持ち」に踏み込んでいくことはしません。
アドバイザーは、あくまでも相談者が思い描くカフェを実現することを目指していくのです。
以上で「カウンセラー」と「アドバイザー」の違いについておわかりいただけたと思います。
それぞれの違いを理解しないままカウンセリングを受けると、「期待外れ」「思ったのと違った」という気持ちになってしまい、かえって心のモヤモヤを増幅させてしまう可能性があります。
そのようなことになってしまうのは私たちカウンセラーとしても本意ではありませんし、お互いにとって望ましいことではないので、事前に「カウンセリングに求めるもの」を可能な限り確認をするよう努めています。
カウンセラーと相談者が合意のうえで、実りある場とするためにも、決して誤解のないよう、自分自身の目的をはっきりさせてから、カウンセリングを受けに来てほしいものです。